2010年1月23日土曜日

可測関数

柴田さんの「ルベーグ積分論」は証明が細かそうだし、多変数の場合の微分についても詳しそうだし、何より最近の本だったので購入したのですが、ルベーグの収束定理まで読んでみてあまり私のような初学者には向かない本なのかもしれないと思いました。

積分する際に、被積分関数が可測であるのかの確認に加え、考えている集合上でその関数がwell-definedかどうかということに無頓着なきらいがあります。この辺りを読者にあまり気にさせたくないのならば、ほとんど至る所等しい関数に関して同値関係を入れるなどの記述を早めにして、ある関数に対してほとんど至る所等しい関数で、しかも考えている集合上でwell-definedな可測関数があれば、その関数の積分はwell-definedな方の関数の積分の値によって定義してしまう、などとするべきだと思います。

これは関数値に無限大を許した他の本(伊藤清三氏「ルベーグ積分入門」や吉田耕作氏「測度と積分」など)にも言えることで、可測関数の項目では可測関数同士の和や差や積の可測性を慎重に取り扱っていても、積分のところではwell-definedかどうかも怪しい関数の積分もあまり気にせず取り扱っているように思います。

個人的にはクドくなっても、毎回積分されようとしている関数が可測関数であることを確認してくれるとありがたいです。そこは細部を気にしすぎると議論の本質を見失わせるので、各自で確認してくれということなのでしょうが。

此処まで書いてみてふと頭をよぎったのですが、関数値に無限大を許したのは特異な挙動をする点のことをあまり気にせずに一般論を展開するためのはずで、上のような方法で積分を定義しようと思うと、積分したい関数のill-definedな点を一々確認する必要が出てきて煩わしいのかもしれません。

しかし可測関数の実数乗が可測関数かどうかの証明が見当たらないのに、ヘルダーの不等式の証明が載っているのは何故だろう。

追記:2011/05/22
著者のHPに補足と修正のpdfが掲載されていました。「ENTER」→「WORKS」最下部の専門書のところです。
積分可能な可測関数はほとんど至るところ有限値をとるため、$\lvert f(x)\rvert =\infty$ なる$x$に対して $f(x)=0$ となるように関数値を修正し、至るところ有限値の関数にして考えるとのことです。可積分な可測関数全体の集合$L(X, \mathscr{M}, \mu)$ にほとんど至るところ等しい関数についての同値関係を定義して、その商集合を考えるとありました。これで $L(X, \mathscr{M}, \mu)$ を$\mathbb{R}$ 上のベクトル空間と考えることができます。
pdfの日付を見ると随分前に既に修正されていた模様です。